上海周辺旅日記 第1日

      ――――― 上海周辺9日間旅日記 8-1.第1日  ―――――

[出発〜上海空港]

 1997年9月10日
  仕事の関係で無かったお盆休みの代わりに遅い夏休みをとった。今回の中国は、
自分にとって通算8度目の海外旅行である。初めての中国とはいえ今回は肩に力が
入っていない。いや、実は、左足だけは6年前に一度入国?していたのを思い出し
た。学生時代の2度目の海外旅行で香港のロクマーザウ(漢字忘れた)展望台から国境
警備員にいたずらっぽく目で合図して踏切みたいな国境の下から左足を大きく踏み出
したのだ。今では、国境を意識した楽しみや動機は幸か不幸か薄まっているので、今
から思うと非常にバカバカしい事なのだが、そのときの感情は心の片隅にチコっと暖
かく残っている。

NW001便 成田18:40 --> 上海20:40(時差-1)
 
 わずか3時間足らずのフライトだ。最近4度目のNWの利用でパターン化している
スパイシートマトジュース(Bloody Marry Mix)と夕食で腹を満たす。ガイドブック
のコピーで上海の宿と黄山への交通をチェックしているうちに退屈する間も無く、上
海に到着。前3回とも米国経由で旅してる為か物足りない感じがした。
 
 荷物が出てくるのが早かったし、入国も検疫もスムースだ。インフォメーション
で180元(*15円2700円)の宿情報を手に入れ、同便の日本人の中で一番に両替をし
た。空港内の中国銀行は1万円分しか両替してくれなかった。「あとはホテルで換え
てくれ」と少しも申し訳なさそうな顔をせずに言う。(後で同日16時着の人は6万円
両替可能だったらしいので単に手持ちの現金が少なかっただけと思う)少し不満だが、
中国のビジネスの様子を色々聞いていて期待もしていなかったのでショックは小さい。
ここまでは、時間の無駄がなく順調だった。が、自分は、早く黄山に行く事にこ
だわりがあった。当初立てた予定は、以下である。

    動き           目的     宿泊地
10(水) 日本〜中国移動             上海泊
11(木) 上海〜黄山の麓(湯口)移動        湯口泊
12(金) 黄山登山                黄山山頂泊
13(土) 予備           朝日
14(日) 黄山下山                湯口or屯渓泊
15(月) 黄山近辺〜杭州移動    夕日と夜月  杭州泊
16(火) 杭州〜紹興移動      舟遊び    紹興泊
17(水) 紹興〜上海移動             上海泊
18(木) 中国〜日本移動

 黄山の御来光が第1目的、紹興の舟遊びが第2目的だ。黄山に出来るだけ早く登
り、晴れて霧と日の出を見る事が全てのキーになる。天候はどうにもならないにして
も、翌日の黄山への足だけは、なんとしても今日中に確保したかった。
手にしている情報は、
  1)長距離バス 5:30発、16時間
  2)電車    ? 発、14時間(南京経由)
  3)飛行機   7:05発、50分で屯渓+車で2.5時間
で、3)の飛行機は一ヶ月前に完全にFULLと言われていた。
実は、1)の長距離バスを実は8時間と間違って読んでいたので、宿は長距離バスの
近くに取り朝早くに直接交渉をするつもりでいた。でも、本当は行きは3)の飛行機で
時間を詰めたい。だから、空港で中国東方航空のカウンターに行き、翌日の空席状況
を確認したかった。
で、30分以上、「中国東方航空」の文字を見せて回り、closeしているらしい事が
わかってきた。だめか、、、。10時近くにあきらめ、 宿に電話をすることにした。
電話を見るとコインを入れる場所がなく、テレホンカード専用になっている。コイン
もなければ、テレカも持っていない自分は、テレカを買おうとまた聞き込みに回るの
だが、警備員が英語が駄目で、こっちも文字がわからない。困った警備員は、ホテル
ブースからプラプラ歩いてきたヒルトンの客引きに助けを求めた。
20才そこそこの若いヒルトンの客引きは、黒い帽子がキマってる。名札には
「DOLYE」(以下Dと略)とある。英語名なんだろう。
D  「日本人?」
いきなり日本語で話し掛けられる。Dは頭〜足までこちらの身なりをスキャンした。
(0.5秒) こっちはTシャツにジーパン、腰にはGジャン、トレッキングシューズ、す
べてブルー基調にコーディネートしてはいるが、間違ってもヒルトンの常客でないこ
とは、明らかだ。
D 「テレカ売ってる売店はもう閉店してるよ。どこらへんに、いくらくらいで泊まり
たいの?」
地図で長距離バスの乗り場周辺を指し、
TAKT「この周辺に200元(3000円)」
D  「上海で200元以下はないよ。そのパンフは?」
TAKT「180元。」
D  「うそ。これで、、、なかなか良いけど、遠いね。」
結構、マジに感心してから、負け惜しみのように言った。さらに、間髪入れずに
D  「長バスの近くだったら、250元のがあるけど」
TAKT「O.K.,Please」
D  「じゃあ彼に付いて行って。」
とホテルブースでの仕事仲間で、香港ヤクザ映画で見た人の良さそうなチンピラ風の
兄ちゃん(以下DFと略)を紹介してくれた。DFは聞き取りやすい英語を話す。
DF「30分ここで待ってて、後でいっしょに行こう。」
白タクかリベートねらいだろう。多少の出費は覚悟した。
5分位ブースでガイドブックを読み返しているとお客がきれたのか、Dが話相手に
なってくれた。
D 「明日、どこ行きますか?」
TAKT「黄山へ移動して、明日中に麓に泊まりたい。」
D 「汽車、列車、いや電車なら14時間かかるね。」
TAKT「バスは?」
D 「ないよ。」
TAKT「ウソ!。日本のガイドブックにこうして載ってるんだけど、それに中国人
   はほとんどそれで行くって聞いたことあるよ。」
本のバスターミナルの住所をマジマジとみて、
D 「あああ、ああ、そういうのもあったけど、危険だし、時間かかるよ。」
TAKT(そんな忘れるほど問題外な交通手段なんかぁ?それに危険ってなんやろ???
   山賊に襲われる?---まさか三國志や水滸伝じゃあるまいし、、、
   運転が乱暴で交通事故が多いのか?)
疑問をぶつける前に
D 「飛行機が一番安全だし、良いよ。少し高いけど」
TAKT「ホント飛行機が取れればね。」
D 「じゃ、とろう。」
TAKT「でも、中国東方航空のofficeはcloseしてるって、それに一ヶ月前full
    だったし、、、」
D 「あるよ。調べてくる。」
Dは頭の回転が速い上に身軽だ、風の様に消えて3分もしない内に帰ってきた。
D 「460元+空港税50元」
TAKT「席あったの?」
D 「あったよ。」(あっさりと)
TAKT「うそ。」
D 「ホント。パスポートある?買いに行くよ。」
TAKT「どこで買うの?」(いい人だし身元もはっきりしてるけど、
     さすがに初対面の人にパスポートを預ける訳にはいかない。
     5年前旅先で中国でパスポートを2回売り400万円稼いで東南アジアを
     彷徨いているおじさんの話が蘇る。)
D 「歩いて5分の所」
TAKT「一緒に買いに行きたい。やっぱ、ここを離れると、、、
   あなたの友達を待つ必要ある?」
D 「いいよ、行こう。」(手を必要なしと横に振る)
 入国して左手にずんずん進んでいくと、別棟に入りタクシーの長蛇の列と客引きし
ているDFに会った。国内線の到着ロビーとDが教えてくれた。その棟をぬけ、真っ
暗な駐車場をゲートの方へ1分歩く。(翌朝確認したのだが、)HONDAビルの隣ゲー
トの左手にある「**商工**」ってビルの中にホテルのフロントと両替所とPC1台だ
け持ってる旅行会社?があった。Dが意図を伝え、端末をたたく(その間15秒)なんか、
空港券じゃない紙を突き出される。文字に「保険」が見える。
「insurance」ってつぶやくとDがびっくりしたように、日本語で保険はどう読み書
きするのか聞いてきた。
TAKT「同じだよ。」
 別に突き出されたメモに「保険(HOKEN)」とふりがな付きで書いて渡すと、
D 「HOKEN、HOKEN」とうれしそうに笑い、
「日本語でも同じ漢字なんだって」なんて事を旅行会社の男に伝えていた。
3人とも笑顔で見合わせ、ささやかな日中外交をした。
TAKT「HOKEN、How much?」
D 「20元」
TAKT(300円かぁ。ちゃんと払われるのか怪しいもんだけど、日本じゃ1000円。
   +土産と思えば安いもんか)「O.K.。Please。」
  後で分かった事だが、実は死亡時15万元支払われるそうだ。まぁ、どっちみち、自分で
使えるわけじゃないので、気分の問題なのだが、、、。
  とにかく、Hiltonボーイ様々で、無事、目的の航空券get!!!
  その後、ブースに戻ろうとすると、D&DFのボスが、ジャガーにシルエットが似
た車で迎えに来ていて、なし崩しに後部座席にバックパック背負ったまま乗り込んだ。
Dの機転で空港から歩いて10分の320元のホテルまで、5分間の身なり不相応な送
迎を受けた。
車を降り際、市内まで60元、近くで15元のタクシー代を考慮し、+100円=20元
を渡そうとするとDは、
D 「僕はいらない。彼(DF)にいくらかやって。」
といい、チェックインのメモ書きから、部屋への案内(他社のホテルなのに)まで全て
手際よくやってくれた。その間、DFはホテルのフロントと何か言い争っていた。
D 「これキーね。こっから抜くとデンキが消えるから、じゃ、いい旅を」
TAKT「謝謝、ありがとう」
  Dは風の様にさわやかに去っていった。ドアを締め、部屋を確認、バス、トイレ、
アメニティ、クローゼット、2Fでベランダ無し、前は片側2車線の道路、魔法瓶、
茶、、デンキスイッチにはペンがささっていた(Dの気配り)。5000円近くする割に照
明が暗く、広いが豪華さが足りない。シャワーと洗面のお湯はすぐ出た。時計は0:30。

[本日の反省]
  トスンとベットに腰を降ろすとジェットコースターに乗っかっていた様な気分が風
船みたくしぼみ、素の自分に戻る。今日の反省、(なんでスマートにキメられへんのや
ろ、初めての土地、言葉、初日、21時着で上海雑技団は無理やし、黄山への足と宿を
今日中に目途つけれたのは目的通りで、結果オーライやけど。全てDがやってくれた、、
もし会わなかったら、、、情けない顔しとってんやろうなぁ。にしてもDはなんであ
そこまで親切に?ヒルトンのプライドは感じた。でも客じゃないし、日本人への先行
投資?)
TAKT「悪いけど、正直いって、寝るだけに180ドルも出せない。」
D 「ヒルトンの客は外国人でビジネスマンがほとんど。ビジネスマンは会社が
   お金出すけど、旅行者は自分のお金でしょ。」
  とも言ってた。よく観察してる。Tipも受け取らない。DFはTip20元を受け取った
上にホテルから紹介料を取る交渉をしていた。Dにとってメリットはなんだろう。D
Fは国内線で来た中国人にも仕事(客引き)してた。DFは中から下流ホテルの従業員、
Dはヒルトンだからその間ヒマだった?でも、、、
  AIRチケット取った時の「HOKEN、HOKEN」のリピートは語学の練習だ。
「汽車」を「電車」と言い直してたし、、、
彼は、日本語を勉強したかったのか。納得。

  一気にモヤモヤ疑問が解消した。明日は早い、7:05発上海?黄山。だから、60分前
+10分歩き+15分用意+オーバーブッキング対策で2h15m前起きの4:50起きだ。今
日、昼間まで寝てて体の疲れは無いけど、寝なきゃ。
シャワーを浴び、TVをちょっと見て、時計を時差1時間戻し、0:30に就寝。
また、かっこの悪い旅の始まりやなぁ。(自分に)おやすみ。

[華錦賓館(HUA JIN HOTEL)]
  上海空港より、入国して左手方向の4車線に沿って徒歩10分。AIRでの夜着、朝
発の人のみ利用価値大。深夜、空港と反対方向へ徒歩5分の所に屋台が出ていた。ツ
イン料金320元(†押金(キーデポジット)=50元)。
Tel:62689445、62686788
  †中国のホテルはたいてい、宿泊料+押金を足してキリの良い金額を先払いさせ、領
収書を切る。チェックアウト時にキーとその領収書を渡さないと押金は返金されない
システムになっているようだ。

[本日(9/10)の収支]
出発前の持ち金
 (国内)京成電鉄株主優待券2枚(650円で購入)+定期券+出国税(VISAで決済)
  25,000円T/C+85,000円現金 = 11万円

両替
  10,000円T/C+30,000円現金 = 2724元 (1元=14.7円)
 現金よりもT/Cも方が1万円当たり20元ほどレートが良い。

出費
  上海-->黄山 航空券  460元
  同 保険        20元
  チップ         20元
  宿代         320元

残金
  55,000円現金+1904元
  (田舎に行くので残る15,000円T/Cはもうあてに出来ないと思った)
  山に入って土日に突入する(最悪、両替不可能な)場合を考え、木金土日の
  4日間は400元/日ペースでいかないとヤバイと大ざっぱに計画した。


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