アフリカ南部の滝とサファリ 第5編

{photo:t905_1Pulopera ボツワナ航空のプロペラ機}

  
  −−−−−− Africa THE South 19Days ― part5 −−−−−−
                  オカバンゴデルタ奥地(湿地帯)


{7日目;5/21(木曜日)(祝日)}

[マウンで宿までヒッチ]
  16:00  マウン空港(オカバンゴデルタ近く)に降り立つ。目の前に旅行会社と
土産物屋があるものの、休日の為、全て閉まっている。まず、ロンプラで目星を
つけたPower Stationという名のキャンプサイトを目指すつもりだった。一番安
くて、町の中心、空港にも近い。明日、銀行と旅行会社を片っ端から当たるつも
りなので、ロケーションが最優先だ。
  セスナの会社が長屋状になっていて開いているのを見つけ、道をたずねる。
「Power Stationねぇ。今、やってないよ。」
TAKT「他に安い宿は?デルタやモレミやカラハリにも行きたいんだけど」
「10km先にキャンプサイトが塊まっている。Island Safari Lodgeなら、キャン
プサイトもあるし、移動の相談にも乗ってくれるよ。」
  素直に従う事にする。ロンプラにも載ってはいたが、18kgの荷物を背負っての
町から10kmはイヤな距離だった。タクシーもない。送迎US$9ももったいない。
公衆電話も見当たらない。地図で方向はわかるのでトボトボ歩き出す。
気が付けば、朝からろくな物を食っていない。クッキー、ビール2、チョコバ
ー、ビーフジャーキー、ピーナッツ、白ワイン250ml。まともな食事をしたいが、、、
休日かぁ。どこも開いてない。、、、開いていた!家具屋?必要ない。
  あーーもう!送迎で宿へ行こう。ガソリンスタンドで無け無しのコインで電話
をかけようとするが、故障中。隣のカード電話は生きているようだ。カードは?
  ワゴン車の男の子にカード買える所を聞こうと思って。エンジンがかかるの見
ると急に気が変わった。
TAKT「ここら辺、通ります?Island Safari Lodge行きたいんやけど。
      電話がつながらなくて」
男の子「僕ら反対方向に用事があるけど、その後そっちに行くよ。それでもよけ
      れば、乗っていく?」
TAKT「Really? Please Please Thank you」
  もう、二つ返事でO.K.。なんて察しのいい兄ちゃん達だ。前にカップル2人、
リフトに2人の男の子。色々聞いていると皆16才から18才でノルウェー、USA、
南アの学生だった。1+2ヶ月、ナミビアとボツワナでボランティアをし、明後日
から南アの会場で1ヶ月間レポートやディスカッションをするのだそうだ。他の
グループもアフリカ各地で同様のボランティアをし明後日から合流するのだとい
う。マダガスカルとかジンバブエとか数え切れないくらい地名が挙がっていた。
TAKT「いいな、うらやましいよ。自分がもし高校生の時から海外を知っていたら」
  と言いたかったが、飲みこんだ。若いとは思っていたが高校生に御情けヒッチ
してもらう30前の自分を少しだけ情けなく思った。それでも、キラキラしたグレ
ーの目で色々な事をHOTに話す高校生を前に、"物分かりの良いお兄さんを気取っ
ている自分"がいる。英語の聞き取りが悪い、話す文章がkidsレベルのチクハグ
な状態で。そういう年になったのかな?そういえば、今回の旅行では、“学生?”
と聞かれた事は一度も無い。全部“職業は?”だった。前回の9月までは、ほと
んど学生で通っていたのに、、、。顔付きが変わった?醸し出す雰囲気が変わっ
た?うーーん?
  20代前半の学生だったころ、旅先で出会った30代は「おじん」に見えたものだ
が、もうすぐ自分も、、、。この子達には自分はどう写っているのか?あぁ、老
け込みそう。腹が減りすぎて弱気になってるのかなぁ?
  彼らの用事の先は、ボランティア中お世話になった家族への別れの挨拶訪問だ
った。家族の旦那が素敵な身のこなし、話し方をするを見ているうちに、悟った
様な考えがよぎる。30前で学生に見られるのも、自分自身もうあまり嬉しい事で
もなくなっている。修羅場をくぐった経験や包容力が顔つきに出ていないなら、
むしろ恥ずかしい事と思えた。
  まいっか、年相応に見られれば。先ほどまでの落ち込みは解消した。我ながら
単純なヤツである。2時間かけてIsland Safari Lodgeについた時、鳩尾を差し
込む様な空腹感が急に襲った。

[初テント]
  もう喉風邪は大分マシ。これ以上良くも悪くもなりそうにない。第一にUS$20
分の現金で明日まで乗り切りたい。フロントでUS$cashは両替できたのだが、サ
ファリ料金が1以上5万円/1日と聞いていたので、残りの費用が読めない内は節
約するつもりだった。US$50もするシャレットは諦め、P15(600円(P1=約40円弱))
のテントにした。
  初体験だ。初めて自分でテントを張ること。おNewのテント。
  説明を見ながら作ってみると。簡単だった。広げて、棒2本通して、棒を撓ら
せて立てる。フライシートは不要。4隅にペグを砂地に打つ。テントの中に入っ
てアルパインマットの空気栓をゆるめる。スリーピングバッグとシーツを広げる。
                     そんだけ。で、 おわり。
  合計3万円もしたから元をとらないと、と思っていたが、1泊で作って直すの
はヤダなと思っていた。風邪もあったし、朝晩の冷え込みも馬鹿にできないと思
っていた。が、結局、このあいまいな抵抗感の正体は、自分の中の面倒くさがり
屋だった。これで5,000円/1夜も浮くのだ。今後、物価の高いボツワナは全部テ
ントで乗り切ろうと思った。
  サラダ(P6)とヨーグルト(P4)とパイ2つ(各P5)と水(P4/1.5l)のささやかなサ
パーを食
べて、熱いシャワーを浴びて、すぐ寝た。


{8日目;5/22(金曜日)}

[ドンキーに起こされた朝]
  朝4時、ロバが(ブーキーブーキー)うるさい。昼間は、おとなしいのになん
で?(そのなんで?ってのはあとでわかる。)天の川が相変わらず奇麗だ。1人
用テントだからか、寝入りばなは暑かったが、朝は寒く、縮こまる様に寝ていた。
昨日のうちにフロントのおじさんに9日間のスケジュールを相談し、「カラハリ
4日、モレミ2日、デルタ3日」の配分がいいんじゃないかという事とお勧めの
旅行会社名を聞いておいた。カラハリまで手を伸ばしている会社は少ないようだ。
また、「quiteな時期」(offシーズン?)と言われた事も気にかかっていた。客
が集まらなくて催行されない場合が考えられるからだ。

[旅行会社とツアー]
  現地旅行会社を回るのに10Km離れた街(マウン)へ。
砂地を1km歩き、舗装道路にでる。親指を立てながら、街の方へ歩いて行く。10km
は歩けない距離ではないが、できればヒッチしたい。タクシーは昨夜から1台し
か見たことがない。まだ涼しい。Gジャン羽織っても寒いくらいだ。
 500m、5台目で白いワゴン車が止まってくれた。ヤリー!と思ったが、乗り込
んですぐ「1pula!」と言われた。乗り合いバスだったのだ。少し、がっかりし
たけど、40円で10km移動できるのだから、よしとしなければ。
 下記は街に着いてから半径2kmをテクテク歩き回って話しを聞いた結果だ。
1)Okavango Tour Safari
    場所はモレミのみ。1夜当たりの料金設定。
    テント+3食+WalkingSafari      US$50(シャレットはUS$100)
    セスナ往復(片道15分)          US$120
    要はドリンクだけ別料金、期間の設定が自由にできる。
2)Audi Camp
    場所は奥地の水位が高い場所。
    3日+翌朝10:00帰り。+セスナ往復(片道45分)込みでUS$200
    安い、残された日程と催行が合うのは、明日の開催のみ。だが、食料と
    飲料は持ち込みしなければいけない。
3)Riroy Hotel内の旅行会社で出会った老人
    ニコルさんを1.5倍太らして20才年を取らした感じ。夫婦でガイドと4WD
    を半分プライベートで雇ったようで、8日間でモレミとチョベNP南部と
    NXAI  PAN保護区を走破するplanを熱く語ってくれた。だが、人数の関係
    から1日当たり28,000円(8日で5000pula)の高額提示。交渉では値引く
    様子を微塵も見せなかった。
4)Batusi Travel
    雰囲気はJTBの地方版。購入転売のみで高いので客が全然付いてなかっ
    た。2)に紹介のtelをするのは親切心?宿の紹介された会社だったが、
    問題外だった。
5)Power Stationの筋向かいにあるガレージ
    ハンティングのツアー会社。保護する人もあれば、そういう密猟っぽい事
    も仲介する業者がいるのだと思った。ここに自分は場違いだった。儲かっ
    ていそうなのが気にいらない。怒ってもしょうがないけど。

 全体的に客数が少なく、カラハリ砂漠のツアーを開催している会社は無かった。
また、今の時期行っても、動物も少なく、距離が遠いので料金が高い、砂漠だけ
に高い料金を払う物好きは自分以外には居ない様だった。
結局、自分の日程の中で選べるのは、1+2)or3)であった。3)はモコロ
ツアーが無いのとデルタに行けない事が欠点で、交渉時に垣間見た業突じじいな
部分が引っかかって却下。1+2)と心はすぐ決まった。というよりも、選択肢
が無さすぎた。
  2件目の銀行で1000円以上の高い手数料を取られながらも何とか日本円cash
を現地通貨pula(P1=40円)に交換した。明日、催行される2) -> 1)を予約し
た。

[The Power Station]
  途中、昨日「やっていない」と聞いたはずのCamp site「Power Station」の扉
が開いていたので何気なく入ってみると、Rock&Popsをガンガンにかけたレスト
ランが営業中でシネマ館もある。金髪で細身のボスらしきおじさんが一生懸命作
っている笑顔と少し努めたフレンドリーさをたたえながら、声をかけて来た。
ボス「食事していく?」
TAKT「いや、今はいい。ここは、ロンプラに載っていたPower Station?」
ボス「そうだけど。」
TAKT「街や空港近くのCamp siteと思っていたら、昨日セスナの会社の人にや
     ってないって言われて10kmも離れた所に昨夜は泊まったんだ。本当はや
     っているの?」
ボス「やっていないけど、テント持っている?」
TAKT「うん。」
ボス「なら、泊まっていっていいよ。Freeで。見ての通り工事中だからね。」
TAKT「うそ?ただ?ホント?Please Please Thank you」
 と言うが早いか、裏を案内される。従業員トイレ、シャワー、薄い砂地、塀は、、、
ちゃんとある。上出来だ。タダだから、シャワーは水でも文句言えないや。と思
い。事前に確認はしなかった。
  建物内の奥ではジモティの子供が、紙すき葉書や手捻りの陶器などを作ってい
た。まるでカルチャーセンターの様だ。バー。その他は建設中でミニステージと
コンクリの部屋があった。
  ツアーには空港を使う。「空港まで歩いて10分以内にある場所にタダで泊まら
してくれる。」というこのofferはありがたかった。一宿の義理ではないが、夕
食は多少値がはるものを食べてやろう。
  そうと決まれば、10km離れた宿なんかいらない。早速、乗り方と待つ所がなん
となくわかってきた乗り合いバスで、昨夜の宿・Island Safari Lodgeまで往復
して、預かってもらっていたバッグパックを取って返した。するとPower  Station
のキャンプサイトには、金髪の青年が2人、先客でいた。言葉を交わしてすぐ、
明日の同じツアーに行く事が分かる。
TAKT「な〜んだ、皆同じ様な事考えるんやなぁ。」
と言って笑いあった。

[食料買い出し]
  スーパーが閉まるまで時間が無かった。18:00に閉まると聞いて慌てて走った。
融通がきかず、定時キッカリに閉まってしまうコモンウエルスの国々は舐めては
いけない。とにかく2分遅れ。警備の兄ちゃんを拝み倒して、電源の切れた自動
ドアをこじ開け、半ば強引に中に入る。3日間飢えるワケにはいかない。こっち
は死活問題なのだ。バナナ、青リンゴ、パン、ピーナッツ、水、ジュース、ソー
セージ。オバサンにあちこちで
「終わりー!」「早くー」「18:00なのよ。」
と追いたてられて、思い付く食料をあせってカゴに詰め込んだ。その為、鍋も無
いこともあり、即食べられる&重い物ばかりになってしまった。
オバサンは始めて見るパン切り機の前で戸惑う自分を見て、目の前でセットか
ら袋詰めまで親切にゼスチャーで示してくれた。
(早く仕事を終えたいって心理もあるだろうけど。)
民族衣装 パン切り機
[ツアー仲間]
  橙、ピンク、紫の多色の沁みる夕日に感動しながら、Power  Stationに戻ると。
タダの泊まり客は自分含め8人に増えていて、皆明日の同じツアーに参加する事
が分かった。
この偶然の半分は当然で必然だった。明日のツアーを催行するツアー会社であ
るAudi CampのOfficeは、このPower  Stationのお隣りだったのだから。
  さて、仲間を紹介すると、
トビー   :UK ;金髪と黒のごま塩頭。性格はガキ大将。情が熱く
                  モザンビークで貰ったミサンガ調のお守りを大切に身に
                  付けている。19才。
スチュワート:UK ;トビーとコンビ。共に高卒で旅に。性格は優しく繊細な
                  気配りをする。19才。
ベン    :AUS;頭の良い休学中の薬学生。木登りが大好き。自分が言う
                  のもなんだが、女性に安心感を与える雰囲気を持つ。
                  22才。
ジル    :NZ ;ジョディーフォスターを連想させる、ハンサムな女性。
                  低音でしっかりした発音が心地良い、なのに自然な色気が
                  漂ってくる。職業は製菓のマーケティング。推定37才。
ミシェル    :NZ ;太っている。無口でざっくばらんな性格だが、優しい面も。
                  安全面や薬に人並み以上の注意を払っている。
                  職業はスポーツ用品のマーケティング。推定27才。
エレ    :UK ;ナミビアの学校の先生。おしゃべりが始まると止まらない。
                  顔が小さくかわいいのは、デブ化が始まっている為?
                  でも時々小学生の先生みたいな態度をとられる。
                  推定25才。
レオネ   :スコットランド ;エレの同僚。共にコロコロ遊んでいる。
                  英語の漫画字を書く。(その字は「ムンクの叫び」型と
                  比喩できる)推定25才。
シャワーを浴びている間に皆、夕食を取っていた。遅れて輪の中に入った自分
は、映画を見ないジルとミシェルとに自己紹介しながら、メニューで一番高いフ
ィレ肉を頬張った。良い肉なのになんで変な甘い味を付けてしまうのか不満に思
いながらも、スープを2杯頂いた。2杯目のは、特別サービスの郷土のこってり
コトコト煮込んだスープでなかなかおいしかった。明日に備え、早めに眠ったの
で、映画組が帰って来たことは知らずに眠っていた。


{9日目;5/23(土曜日)}

[オカバンゴデルタ奥地へ(Audi Camp Tourのスタート)]
朝、テントをたたみ、あわただしく朝食を取って、
8:00  空港へ行く。ここで新たなツアー仲間に出会う。

ミシェル夫妻:スイスフレンチ;奥さんは赤毛。仏語訛りの英語がかわいく
                  聞こえる。推定40才。
                  旦那はチャックノリス似、ターザンも連想させる。
                  推定50才。
今回のツアーは、自分を入れて10人。自己紹介すると、
TAKT    :JP ;金髪、赤毛の中、唯一の黒髪。中途半端に短髪なので、
                  最近、寝癖をほったらかしている。
                  職業はコンピュータープログラマー。29才。

このツアー仲間10人で3日間をすごす事になる。

セスナ3機に分乗して45分低空を飛んだ。が、自分の乗った右座席は、逆光で
何も動物は見れなかった。他は、キリンや象等がみれたそうだ。口をとがらせて
「見えなかった」という自分をエレがからかい。ジルが慰めてくれた。

[村]
  着陸した草と土の空港の周りは、学校やスーパーや沢山の民家があるちょっと
した村だった。コンテナを積んだだけのスーパーで埃をかぶった缶詰やチョコ等
を買い込んだ。足らない食料の補充だ。その後、客10人に対してガイド兼船頭6
人でモコロでの移動が始まった。
{photo:t905_4MOKORO モコロ}

[モコロで移動]
1隻は荷物運び。船頭1+客2人の構成で計6隻のモコロで移動する。モコロと
は、本来、ソーセージツリーという固い幹を持つ木を1本くり貫いたカヌーの事
である。でも、ツアーに使用したのは、グラスファイバー製がほとんどだった。
漕ぎ出してすぐ、船頭が、「今日はこれから6時間の移動だから、楽にしてくれ」
と言われた。言葉に甘えて、半分は寝転んで過ごした。
ガマ、蓮や他の白い花が咲き乱れる水辺をモコロで移動しているとすごく穏や
かな気分になる。寝転んで目を閉じると、水面に出し入れする櫂(二股に別れた
棒)のゆったりとした、それでいて力強い音が一定のリズムで聞こえてくる。た
まに聞こえてくる鳥の鳴き声、カバの威嚇音。自然に落ちた軽いうたた寝が気持
ち良い。
昼飯時、子供達が別モコロで向かいから、接近して太い水草の茎を次々に船頭
さんに手渡していく。船頭はそれの皮を剥いて真っ白な中身をかじりだした。自
分も貰ってかじる。サトウキビの柔らかい極薄の甘さが、水分と共に喉に流れ込
む。根元の柔らかい茎も適度な歯ごたえでおいしい繊維だ。だが、その茎も上の
方は、繊維分が多くなって、飲み込めない程のささくれた繊維になる。

{photo:t905_5Foodmiki 昼食 水草の茎}


夕刻にカバのテリトリーを端から見つめ、少し興奮した。が、ほとんどは時間
を忘れて、ボーっとできる6時間だった。

[サバイバルキャンプ]
大きな木に囲まれた焼けた炭の跡だけがのこる自然の広場に着いた。ここにキ
ャンプを2泊張るのだという。ガイド達は自分のお湯や魚を用意しながら、当然
の様に、最小限の質問だけに答える。
「トイレは?」
G「虫が寄ってくるので、このスコップで穴を掘ってからして欲しい」
「シャワーは?」
G「無い」
G「明日は、 WalkingSafariをする。出発は7時。 」

{photo:t905_6Audicamp 野性的なキャンプ}


それぞれ、持ってきた食事を作り、食べ、交換する。自分はパンにソーセージ
だけ。トビーとスチュワートは、MaizeMealという粉を熱湯にとかして、缶詰の
豆のトマトソース煮と混ぜて食べていた。 MaizeMealだけの完成型は味のないペ
ーストっぽいパンになる。それだけでは味が無さ過ぎて食べられないが缶詰の塩
気があって始めて食事らしきものとなる。
そう言えば、昨日蒸したトウモロコシを道端で買って歩きながら食べていた時、
暇な男が、
男「それを何というか知っているか」
TAKT「コーンでしょ。」
と言う自分に向かって「Maize」という物だと教えてくれた。その時は、トウモロ
コシのことをここボツワナの言葉(サツワナ語)で「Maize」と言うのだと勝手に
理解していたのだが、、、
UK出身の彼らに言わせると英語でコーンに似ているけど、違う穀物だというこ
とがわかった。そう、粒が歯抜けの育ちが悪いトウモロコシだなとは思っていた
んだ。よく見るとガイドもご飯代わりにMaizeMealを作って食べていた。女性陣
とベンの組とミシェル夫妻は、バーナー持参で品数多く作っていた。やはり一番
おいしかったし、デザートまで作っていた。デザートのライスプディングは、2
口目まではおいしかったが、それ以上は、自分にとっては甘すぎて、甘い米とい
うのもいただけなかった。


{10日目;5/24(日曜日)}

[WalkingSafari]
朝から力仕事(穴掘り(^^;))して、バナナと青リンゴの簡単な食事を済ませた。
モコロで30分移動して、歩き出す。皆、ガイドの「明日は、少し歩いてから朝食」
という言葉を聞いていた為、2時間位で戻って朝食を取るものと考えていた。だ
が実際は、奥地へ2.5時間歩いて、古代の馬サッサベ以外は、ワシ、鹿、バブー
ン、ワトホッグと興奮度の少ないシャイな動物ばかりだった。僕らは、自分以外
水も用意していなかった。まず、レオネが疲れた表情で「戻ろう」と言った。ガ
イドは6時間の船頭よりも歩く方が楽なのかケロっとした表情である。余り動物
が少ない事も長引いた原因かもしれない。皆ガイドしか分からない道を戻りだし
た。4時間歩いた。モコロに着くと皆、空のペットボトルを水面下10cmの中に突
っ込みゴクゴクと飲んだ。うまかった。きれいな水で下痢もしなかった。だが、
WalkingSafariに十分な水も持たずに出た自分達の考えは甘かった。自分にして
も500mlしか持っていなかったのだから、、、。

[雑誌とけだるい午後]
11:00  ようやくまともな朝食をとる。
  ガイド(兼船頭)に「午後はどうする」と聞かれた僕らは、数少ないオプション
の中から即座にpoolを選んだ。女性の「体を洗いたい」や「シャワーの代わり」
といった質問からpoolの事を知ったのだ。
ジル「洗えるの?(うれしい声)」
船頭「何を」
ジル「Bodyよ!(決まっているじゃないとばかりのイライラした声)」
船頭「あぁ、泳げるよ」
察しの悪いガイドに向かって「Body」の言葉だけ語気が強くなったジルを意外
に思ったが、それは女性の総意であった。込められた語気がせっぱ詰まった欲求
を表していた。振り返ってみて、自分も普段の生活では、やはりシャワー無しの
日があったら耐えられないのだが、その時は、泳げる事の方が嬉しく、最初の夜
にシャワー無しと分った時点で染まったというか、あきらめたというか、彼女ほ
どの体を洗うという事に対する欲求が湧いてこなかった。まぁ、湿度が非常に低
い事もそれほど肌がベタベタしなかったので、あまり気にならなかったのかもし
れない。
  平気に歩いている風に見えたガイドも僕たちもお互いに疲れていて、なかなか
行こうと言い出さないまま、だらだらと時が過ぎていく。スチュワートが買って
きた雑誌「Men's Health」の中で「女性に生まれて得な事49項目」ってのが1ペ
ージ使って載っていて皆で回し読みをしていた。
・ 甘いシェリーを頼んでも良い。
・ 映画館でホラーや恋愛物で泣き叫んでも良い。
・ 子供の様に振る舞っても構わない。
男性誌の記事だからくだらない、だけれど、皆して文化的なものに飢えているの
か、酔った時の駄洒落の様にハマっていった。そのうち自分は、分からない単語
(sore=pain, petite=小さい,とか)を見つけると質問して、簡単な単語に変換し
て貰ったり、ゼスチャーをしてもらったり、体の部位を示してもらったりしてい
た。が、1発、女性に聞くには酷な部位が出てきたので質問は打ち止めにした。
本当は、もっと意地悪して、エレが照れる様子をもっと見たかったが、、、。そ
の後、ジルとエレは遠目から「エクスタシー」の単語が見えるページを見ながら、
「これ、まちがっているね」という風の艶っぽい笑いを時々起こしていた。
  風とそれに揺れる木葉の音しか聞こえなかった。それ以外は。

[POOL]
15:00 待ちに待ったpoolへモコロで出発。30分で、底に岩や石が全くなく、水
草も茂っていない幅10m×長さ15mの川に着いた。冷たい。10人皆入った。いい
年をして、水を掛け合ったり、沈め合ったりしていたが、それも飽きて30分位で
水遊びは終わった。

{photo:t905_7Poolrive 自然のプール}


真剣に体を洗う人はいなかったが、女性陣は、バスタオル以外にバンダナ生地
の広い布を用意していた。水から上がると一様に腰や肩に巻き、バスタオルを肩
に掛け暖を取っていた。男と違って布が多い分大変だなと思うと同時に、その画
一的な後処理になぜか(感心して)うなってしまった。国が違っても、人間のやる
ことなんて似ているのだ。旅馴れている人であると旅の考え方や道具が余計洗練
されて、収束するのだろう。

[モコロ遊び]
  日が落ちるまで少し時間があったので、仲間の内、5人位がそれぞれ1漕のモ
コロを仮受け近場でモコロを動かす練習をした。前日から6時間以上も見ていた
ので、大体の操作は分るのだが、見るのとやるのでは大違いで、軽くてバランス
の安定しているグラスファイバー製のモコロでもなかなか思い通りにカーブ出来
ない。櫂で水底をついて体重をかけて押し出す。するとモコロは前へ進む。言葉
では簡単だが、櫂が1本の為、船頭の様に真っ直ぐ進む事ができない。でも、30
分ほどで自分なりのコツを掴んで、日没も見て、帰ってきた。遠くで、「ぶぅぉ
ー、ブフォー」と警戒音を発しているカバもいたんであまり無理はしなかった。

[サバイバルな食事]
自分は鍋を持っていない。だから、昨夜は、ソーセージをアルミホイルで包ん
で暖めてから食べた。今夜は、豆のトマトーソース煮の缶詰とパンとソーセージ
を使おうと思った。缶詰を少し食べて減らしてから、やはり暖めた方がおいしい
と思ったので、そのまま炭の間に置き、缶ごと鍋に見立てて暖める事にした。そ
こに、ソーセージを3本突き立てた。昨日と同じ事をしたくなかった気持ちもあ
ったが、わざわざアルミホイルのトレーを作るのが面倒くさかったこともある。
でも、缶に3本の肉棒が突き出た様子はガイドの笑いを誘い、トビーからは、
「Cool System!」
との賛辞を頂いた。味は、やはり煮込んだ方がおいしかった。

{photo:t905_8Audicook 鍋がなくても,,,缶詰でソーセージを煮る}



{11日目;5/25(月曜日)}

[朝]
朝6:30、ベンは、ガイドが仕掛けた罠の魚取りに行くのにくっ付いて行った。
自分は日の出をモコロ上で拝みたかったので早起きした。ベンに、5時頃、カバ
が近くまで来て、ガイドが懐中電灯を左右に振って追い返したって事を聞いた。
カバ君の方がテリトリーを間違えたらしく、左右に振られた懐中電灯を見て混乱
して帰っていったそうだ。
自分は、クモの巣や蚊や蛾をかき分けながら、日の出を静かに見守った。
ベンの方の釣果は、バブルフィッシュ(なまず)8匹。普段より少ないそうだ。
水草で口同士を器用に編み込んだ束はなかなか見ごたえがある。

[6時間の帰路]
途中、象とバオバブの若い木(2m)を見たのと昨日と別のpoolで泳いだのがイ
ベントだったくらいで、淡々と帰路に着いた。バオバブの新枝は食べられるとガ
イドが2,3本枝を折っていた。残念ながら自分は食べることは出来なかったが、
即食べないところを見ると、調理してからって事なのだろう。

{photo:t905_9Baobabum バオバブの若木 全長2m}

  お互い暇なのでベンとしゃべっていた。エジプトで買った対マラリア用薬イモ
ディウムが実は、ロペミン系の下痢止めだったという話を淀むこと無く理解し、
笑ってくれたベンは薬学をしっかり勉強している。と思った。

[村のキャンプサイトで]
少なくとも水シャワーと灰でかぶせるボットン便所があるキャンプサイトに戻
ってきた。荷物を置き、テントを張る前にスーパーに買い物に行こうという事に
なって、15分ほど、離れた。
パンは相変わらず売っていなかった。自分のが残っているので皆にあげると言
って戻ってみたら、跡形も無くなくなっていた。見張りがいる為、油断した。ス
ーパーの袋に眼鏡などと共に食料を詰めていた2袋。大体混ぜて袋に入れていた
事もミスだった。poolに入った時に無造作に混ぜてしまったのだ。
まず、ジュースがぶちまけられていた。そのしずくが、バッグパックにべった
り。そのうち、犯人がバブーンという事がわかった。そのスーパーの袋が木の上
に乗っていたからだ。木登りの好きなベンが上っていき、袋の中が空であること
を確認した。惜しいのは眼鏡(スペア)も紛失してしまった事だった。落ち込み
はしたが、ほっとした。
大体の真相が掴めて
TAKT「でも、よかった。」
と言ったら、
エレに「人間じゃなくて」
と自分が言おうとした言葉を先に言われてしまった。自分も正直、最初はガイド
を疑っていたのだ。やはり僕らは似ている。

[サンセット]
警察と学校の船が浮かんでいるほとりで、サンセットを見た。
{photo:t905_10Sunsetok オカバンゴデルタの夕日}

むちゃ奇麗で感動して帰ろうとすると。側で見ていた警察官が、のんびりと話か
けてくる。彼がアメリカに対するあこがれや映画の話をした後、何を見ていたの
か聞かれた。
トビー「こんな多色で奇麗なサンセットのヨーロッパでは見れない」
警察官「こんないつでも見れるもん。なんで?、観光客はここに来て恍惚の表情
       で帰っていくのか不思議だったんじゃ。」
日常的に見れる物は、そこに住んでいる人に取ってはそんなもんかも。すっとぼ
けた会話はそんな、当たり前の事を気付かせてくれた。

[最後の晩餐]
  盗難事件のせいで、皆の食事を分け与えてもらった。中でもガーリックソルト
で味付けしたMaizeMealはなかなかおいしかった。カレーライスもあって大感激
だった。自分にとってはかえってよかったかもしれない。トビーは毎夜のごとく
モクる。皆で一人ずつアフリカや世界での恐い話を話合う。動物・山・ドラッグ・
ヒッチetc.テーマは多岐に渡っていたが、皆が口々に話すのではなく、一人一人
が話していくスタイルだったので、多少早い英語ではあったが、何とか言ってい
る内容は理解できた。自分もライオンのにチャージされそうになった友達の話と
タイ北部のチェンライで訪ねたドラッグのリハビリセンターの様子を話した。 中
毒者って単語を忘れて困っていると「アディット(addict)」とすぐ間の手が入っ
た。3日目ともなるとなかなか意志の疎通スムースになってきている。
話が尽きた頃、いつもよりも遅い22時に就寝。


{12日目;5/26(火曜日)}

[Kiss]
  朝、女性は凍えながらも水シャワーを浴びていた。朝は少なくとも10℃以下に
なる。そこでのバケツシャワーは、せっかく直りかけている風邪を復活させそう
だったので、自分は遠慮した。おまけに自分は、3連夜ライオンの様ないびきを
かいていたとミシェルに笑いながら文句を言われた。ここで、いびきがスヌーズ
(snooze)でなくスノー(snore)であるってことを気付いた。ズーット、スヌーズ
と勘違いをしていた。まぁ、遠慮がなくなっただけ良い関係になってきたと言う
べき?か。
帰りのゲームフライトは、しっかり右側に陣取り、象、カバ、鹿系を見ること
ができた。空港では、ミシェル夫婦とジルに住所交換し、別れを告げた。過去に
数回経験しているが、婦人と頬でした別れのキスは相変わらずぎこちない。いま
だに、音を発して良いものかどうかは分からない。ミシェル婦人とジルは故意に
音をを立てていた。旦那レトの方は握手、静かな野人の風体に違わず、ゴツゴツ
の逞しい手をしていた。
ひとまず、7人はThe Power Stationに戻る。どうやら、ここに今夜泊まるのは
自分だけみたいだ。トビー、スチュワート、ベン、ミシェルは、4人一緒にヒッ
チでチョベNP(カサネ)をねらい、ヒッチポイントまでタクシーで行く相談を
している。エレとレオネは、ナミビアに帰るバスの相談。皆、今日中に上手く行
けば、この町(マウン)を去っていく。女性とは両頬にkiss、男とは固い握手を交
わし、
4人と2人を見送る。
一遍に別れが来て、虚脱感の様な物を抱きながら、一人The Power Stationに
帰ってきた。テントを張り、砂まみれに汚れた衣服を洗う。シャワーを浴びてい
た時、顔からボロボロと崩れ落ちる物があった。ついに脱皮か。腕もボロボロ。
シーズン的には秋なので、余り焼けてないと思っていたがゆっくり日焼けした肌
は細かく剥けていった。もみ上げ下に剥けていく肌を丁寧に擦りながら、
(あっちゃー、こんな汚い肌にkissしてくれていたのか、、、)
と一人赤面し、後悔していた。

[町]
マウンの町は、半径2km位に日本でいう郊外型のスーパーマケットが8店以上
ある。品物を見てがっかりしたのだが、地場産業というものがほとんどない。せ
いぜい、塩と紅茶くらいだ。靴や衣服は全て、インドや中国製。その他の日用品
も南アからの輸入品である。町中には穴の空いたTシャツを着ている子供も沢山
いる。広い国土に少ない人口。平均月収6万円というのは、溢れる資源(ダイヤモ
ンド等)に頼り切った数字だといえる。民族衣装のおばさんは比較的良い身なりを
しているが、資源で潤っている人は限られている様に思える。貧富の差は相当激
しいのだろう。今日で町は最後。500mlのラズベリーヨーグルトを2回ビールジ
ョッキのごとく流し込み、500mlの牛乳をゆっくり飲んだ。マトンパイ(P2)を楽
しんだ。Maizeは探したが生しか売ってなかった。
  キャンプで感動したガーリックソルトは   P 5。
ティーバッグの紅茶は                P 4。
皮のコートは                     P90。
そんなものしか興味を引かなかった。made in Botuwanaがほとんどなかった事が
悲しくかつ不安だった。靴屋に行って、
TAKT「made in Botuwanaのが欲しいんだけど」と言ったら、
店員「あんたは商売人か?なんでそんなものを探している?」
TAKT「自分は旅行者だから、その国の産物が欲しいんだ。」
店員「わかった。けど、、、」
店員は少し恥じる様に力無く首を横に振った。
  そうやって、ブラブラしている内にワインを買い忘れた。

[映画]
  その夜は、The Power Stationで食事をした。ウエイターが違っていたせいか、
1人だったせいか,前回サービスのスープは出なかった。今回の旅では英語のヒア
リングが自分の中で過去一番こなれてきている感じがあったので、確認の意味も
含め、映画(P10)に挑戦した。客は自分含め2人でほぼ独占状態。ホワイトハウス
で女性が殺されて始まるストーリーだったが、ほとんどの会話が理解できた。最
後の決め台詞が把握出来なかったのが不満ではあるが、満足した。自分自身でこ
のヒアリングテスト点数を付けるなら75点。多分日本でなら30点くらいだった
ろう。帰りに覗いてみた無人の映写室にはビデオが置いてあった。良く館内を見
るとフロント照射型の1管式プロジェクタで3:4の120インチスクリーンに強引
に写していた代物だった。だから、画像が悪かったのを納得すると共に、ここの
ボスが一生懸命に娯楽を根付かせようと頑張っている気概みたいな物を感じた。

その夜は、幸か不幸か、誰も帰ってこなかった。
キャンプサイトに一つしかないテントで寂しく就寝。


続く−−−−−− Africa THE South 19Days ― part6へ −−−−−−


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