上海周辺旅日記 第3日

{photo:t803_1飛来石. 隕石かな?}


    ――――― 上海周辺9日間旅日記 8-3.第3日  ―――――

 1997年9月12日

[モーニング悲鳴]
 1997年9月12日、圧縮された綿の布団の断熱効果は抜群で汗をいっぱいかき、
2度ほど目が覚めた。鼾&歯ぎしり大合唱の中それでもぐっすり眠っていた。
突然、

   「ふ、いや〜ん。う、わ〜―〜―ん」

っと、女性の悲鳴&鳴き声。さすがに皆起きる。時間は、3:50。
目覚し時計は、必要なかった。声の主は、FAさん。
FAさんの見た夢は、蛇がいっぱい。(インディージョーンズの世界か?)

[御来光・日の出]
  北海前の見晴らし台で待つ。誰も来ない。日の出を見るのに暗闇の中何とか登っ
ていったっていう経験者の話となんか違う様な気がして5分青い暗闇の中、待つ。
北京語を話す一団が、3人、7人、2人となんらかの意志をもって、林の中の石
段を登っていく。これだ、追いていこう。ペンライトで足下を照らしながら、前の
懐中電灯を追う。登りは楽だが、下りは、近くまで行かないと段が見えないので慎
重に歩みを進めた。祠とか、迷ったりして、ようやく山頂とその下の見晴らし台に
落ち着いた。先客に防寒服のカップル1組と横入りのカメラマン。だが、満足の
いくアングルで石の塀にカメラを固定して、暗いうちから岩や松のシルエットをね
らった。気圧で少し膨らんだカロリーメイトをもしゃもしゃ、サイダーをコクコク
飲みながら、ひたすら待った。
  6:00、日の出。雲だか、霧だかわからないが、その真ん中から朱く円が顔を出し
ていく。霧の上から出ると思っていたから意外な位置からの出現だった。花札の様
な色とシルエットをした日はぐんぐん登り、程なく、まばゆい光を放つ見慣れた太
陽になった。見れた。これで満足だった。

[豪華な朝飯]
点心 :肉まん、饅頭(アン無)
粥  :余計な塩味は着いていない。
粥の具:サツマイモの茎、大根、チンゲン菜、厚揚げ豆腐など
卵  :おでんの様に塩味がしみていて、烏龍茶の香りがする。
粥の具および卵は塩味がきつく味が濃く着けてある。粥とのバランスが自分で調
節出来て、油で疲れた胃に美味しく吸い込まれていく。

[峰から峰へ]
  9:00、気持ちゆったりめに出発。排云亭へ向かう。ここにもりっぱなホテルがあ
った。目の高さに土産屋のガラスケースの奥ではまだ男が寝そべっていた。その前
で荷物運びが「カモカモ、ニモツ」と言って待ちかまえている。
この「カモカモ」は「comen'」と英語のつもりだろうが、日本人のこっちにとっ
ては「カモる」の「カモ」に聞こえる。
「おおい、カモが来た、金持ってんねんから稼がせろや」(意訳)
ちっとも友好的でない。エジプトのバクシーシ攻撃と似た言い方が気に入らない。
休み休み無理せずに石段を登り、降り、また登る。心理的にも、体力的にも疲れ
てきそうな登りの中腹などに先ほどの荷物持ちが先回りして待ちかまえている。彼
らのたかろうとする時の嫌らしい笑みがエジプトを思い起こさせるのだ。ハイエナ
の様にうっとうしい奴らだ。名所の名前と風景が簡単に一致出来る「飛来石」(写真
上)まで2時間近くかかった。今までの道を目でたどると峰から峰へ渡り歩いている
事がよくわかった。

  たびたび柵のチェーンに南京錠が二つ対になってかけてある。連心結(LoveKnot)
ていって昔の写真では、ハンカチが結ばれた様子が紹介されているが、環境保護の
為か、商売の為か、南京錠2ヶ15元刻印付きに切り替わっているようだ。名前と
4字位の漢語を書いてくれる。鍵はほとんど(^^;)同一なので、他人に開けられない
ように鍵をひねってから折る事が流儀だそうだ。(鍵穴がふさがっていれば同一の
鍵をもっていても簡単には開けられない。)
道々、崖や遠くの霧を見ながら、気象観測所を抜ける。トイレは無い。2本の竹
をうまく使って、商品運びをしている人が長い石段を荒い息使いで前後に揺れなが
ら登ってくる。両天秤の品目は、
  ・観念した顔の茶色のニワトリ3匹ずつ。
  ・豚の上半身と下半身。
  ・パンや水や雑貨、缶詰、石、なぜか家具
約750m下ると、食堂や小さい宿(1床(bed)60元)があった。トイレも出現。荷
物を見てもらって、用をたし、戻ってくると、自分のバックパックの周りにハチの
様に荷物運びが3人ほど群がっていた。彼らは大きい荷物を目標に彷徨いている
のだ。中身はすかすかなのだが、見た目大きな自分のバックパックとYA&MY夫
妻のスポーツバッグが行き交う登山者の中でかなり大きめである。自分の荷物が彼
らを引きつける蜜になっていることがわかった時、ちょっと同情した。悪いが、意
地でも担がせない。情けないことに、ふくらはぎが時々痙攣していたが、、、。
そこから大きく2つの山と谷を乗り越え、昼食をとった。パン、板チョコ、ソ
ーセージ、水、まともな味のパインジュース。
  霧が濃くなってきた。エアーズロックの1/300暗いの大きい岩のそばで休憩。
人が1しか通れない細い崖を通過し(登りの難所を道を間違った下り客が入って
いったから大混雑)、ようやく玉屏婁のロープウェイにたどり着いた。
6人乗りでスキーのゴンドラの様なロープウェイは並ぶ人も無く、すんなりと降
りることができた。このゴンドラはオーストリア製、昨日登った大型のおんぼろは
日本製だった。速度はゆっくり。霧が次第に晴れ、腕に触れる風がなま暖かくなっ
てくる。眼下には、このロープウェイ建設のための竹で作られた仮説足場が崩れな
がら残っている。こんな崖によく道を付け造ったもんだと関心する。
ロープウェイを降りると最新式ビニール巻き取り式ボットン便所があり、しっか
り1人1元取られた。

[下山して]
  宿やタクシーの客引きを相手せず、歩いて13分という下の村へ石段を下る。途
中、滝もあるらしい。車の客引きはもう追ってこない。ヤンキーとアンパンマンの
ような厚顔のオバサンがくっついてきた。滝に到着。ヤンキーが離れたので、荷物
を置いて、みんなで足を浸す。冷たい。さすがに全員靴を脱いで、くつろいでいる
のは、まずいと思ったのか、MYさんが(疲れているにも関わらず)荷物番をかって
出てくれた。水に浸かった足から疲れが流れる様な感覚と曇っっているが少しまぶ
しい空から、ウトウトした頭で、
(楽しくスムースな旅ももう今日で終わりかもな、6人が杭州ならもう一日一緒に
居られるけど、、、南京なら虫が居るし(ウソ^^)、、、でもそれも楽しいかも、舟
で下って上海入りする方法があったはず。っzZ)
 ほんとに眠りそうなリラックスした状態からJGさんの呼ぶ声で我に返った。

[Fuckin Terrible Hot Springs]
  宿で温泉入るか、温泉だけ有料で入って下山して宿をとるか、賛否あったのだが、
その一方を吹き飛ばす事件があった。客引きは相変わらずつきまとってくる。手当
たり次第宿を勧めている。まあ、見所や滝ではおとなしく距離を置いてくれるのだ
が、、、。
  階段を降りきると、村。そして50元の温泉が2件。珍しく、アメリカ人が男女
居る。男の方がいきなり(以下U男、U女と略)

U男「Fuckin Terrible Hot Springs!君たちに真実を教えて上げよう。ハエは浮い
てる、カビは生えてる、非常にDirtyで、、、金返せ、ゆーたんやけど、返さんか
った。」

  湯の為か、心頭に来てるのか、上半身裸で白い肌を真っ赤に紅潮させて一気にし
ゃべりまくっていた。英語を理解してくれる人なら誰にでもぶちまけたかったのだ
ろう。胸のネームタグの動きが止まって、
「日本からか。」「ワシントンからだ。」
なんて普通の会話になってきた。とりあえず宿を落ち着けようってことになった。


{photo:t803_2冷蔵庫. カナ文字が妙に笑える}



[客引きオバサン]
  客引きオバサンの話(北京語)では、もう少し大きい村でバス乗り場もある湯口は、
ここではなく、車で10分ほど下った場所にある。そこまで行けば、宿の選択肢も
広がる。と考えた僕たちは、このときは名前をチェックしていなかった黄山賓館前
から、オバサンの話に乗ってワゴン車に乗った。コロコロ太った体を一生懸命走ら
せてどこかからワゴン車を調達してきたオバサン。話し方や営業笑いの作り方から、
なんとなくいやな予感を感じた自分は、

TAKT「俺だったらこの手の客引きは避けるな。ほら、あの営業笑い。」

と隣にいたJGさんに半分独り事を言いながら、トラブった時の予防線を兼ねて振
り向きざまのオバサンの写真を撮った。(うっ、フィルムが腐る。)
  20人乗りワゴンは、7人とオバサン、ヤンキー、運転手、途中で拾った3人の
地元民。ゆったりだ。5分で山道を駆け下り。黄山の門脇を通り抜けると、おばあ
ちゃんを含め20人弱がワゴンを追いかけ必死の形相で追いかけてくる。
200元の宿、100元の宿を見る。2軒目、自分はAS&FAさんと荷物番してい
た。茶売りのおばあさんが2人ワゴンのドアを開けて入り混む。1袋10元が無視
していても2袋、3袋10元になる。もう1人はかんぴょうや椎茸。そのまま食べ
れない乾きモノばっかだった。情に流されまいと途中から無視を決め込むが、「じ
う元、ジウ元」の声が、耳奥にこびりついた。
皆戻って来たが、どうも交渉がこじれたようだ。100元の宿は風呂も部屋も非常
に良いらしく、金額比で止まりたいのだが、外国人を泊めてはいけない宿だという。
宿主は反対しているが、オバサンが説得する間、ヤンキーと別の観光地へ案内する。
という変な話になってきた。
7人で相談。
「オバサンの説得は保証がない。」
「山頂と滝を見た以上観光地ってあったっけ、絶対怪しい。ツアーって言って、た
かるつもりだよ。」
「そもそも外国人ってわかっていてこの宿紹介することがおかしいんちゃうか。」
  とりあえず、荷物を引き上げ、地元民と同じ1人当たり5元を手渡し、歩いて宿
探しをする。「バイバイ」「しっし」とまでいってもオバサンは付いてくる。他の
客引きを見事に追い払いながら、、、。
  たまらず、食事を取って相談することにした。食堂も呼び込み合戦が激しい。何
となく、手近にいた宮崎淑子を太らせても似てないけど、なごませる雰囲気がある
女将の店に落ち着く。うるさい売りばあさんや客引きオバサンを女将に追い払って
もらうと、久しく、静寂が訪れた。ため息が漏れる。ガイドブックの宿に電話して
予約してから移動しよう。とりあえず食おう。魚、チンゲン菜、スープ、青島BEER、
焼きそば、ウサギ肉。北京語と日本語がわかり、交渉で緊張の糸が切れたのか、Y
Aさんが、日本語で
「うさぎ肉」
ってオーダー。女将が
「へっ」
って一瞬動きが止まったのが面白かった。
  (YAさん、日中両国の言葉に挟まれてご苦労様。)
結局、ガイドブックの売り文句が良かった「黄山賓館」に予約。また、ワゴンで登
ることになった。

[もう一日]
 黄山賓館。着いてみると元の場所。情報のツイン80元とは大違いで、最低300
元する。狭くてエクストラベッドは置けない。もう皆疲れ切っていた。
TAKT「自分が300元でいいよ。」
って言い出すのを遮り、YAさんが粘り強い交渉。ツイン4部屋1人150元each
になった。MYさんの「惚れ直したわ。」ってのは、冗談めかしながらも、ホント
に「尊敬〜☆」って感じで盛り上がった。同時に杭州行きのバスも決定。55元の
チケットは宿に70元足らずで頼めた。南京へ行く為には2時間バスに乗り屯渓ま
でいかなくては行けない。自分も当初予定していた土地だ。バスチケットを一緒に
お願いした時、無言ながら"一緒に"、っていう6人の優しい視線が感じられて、こ
そばゆくもうれしかった。

 部屋はシャワーだけだが、2日ぶりに垢を落として心地よかった。Fuckin Terrible 
Hot Springsが隣の隣にあるが、強いて温泉に入ろうという気は失せていた。ビー
ルを冷やしてもらい、散歩で時間をつぶす。絵葉書12枚セットで80元なんてか
ましてくる土産屋(ちょっと甘いが9元でget)や、見事に乾き物しか売っていない
土産屋を冷やかし、小さく酸っぱいKiwiをだまされ買わされた。中国で一般的に
味見はさせてくれないのだが、その味見は甘かった。買ったヤツは見事に酸っぱか
った。(あんのオヤジー)

  適当な食堂を探すが見つからない。桃源賓館の真っ暗な入り口まで、海南島リゾ
ートでのボッタクリサウナの話と中国の商売女で上海女は箔が付くって話は面白か
った。橋の袂で冷えた缶ビールで乾杯。初めての「健力BEER(ラガー)」は自分に
とっては濃く苦かった。くつろいでいると、少しスレた感じの姉ちゃんが、日本人
とわかってかまってきた。言葉の教え合いだ。双方のつなぎは、筆談と英語。
1〜10、杭州(ハンザウ)、日本人(イーベンレン)、いくら(トウサンチン?)、いら
ない(プーヤウ)、美しい(ピョウリャン)、please(チン)、友達(ペンヤオ)、おはよう
(ニーツァオ)、水(スイ)、湯(タン)、北京語が一気に増えた。結局、彼女も食堂の
勧誘が目的だった。少し小腹が空いている。「ラーメン食べたい。」なんて1人が
言い出したのを皮切りに何となく7人がビーフンでもいいからスープに麺が入っ
ているものを食べようって事になる。でも、相談がまとまる直前に彼女はどこから
か駆けてきて走り去っていく子供を追いかけて姿が見えなくなった。彼女の店で食
おうと思っていた気持ちが肩すかしをくう。弱気だがしつこい兄ちゃんの食堂は目
の前にあるが、そこで食うのは反対多数で否決。明日のバスに乗るためには5:00
起床予定だ。何となく、そのまま部屋に戻り、シャワーをもう一度浴びる。10:00
就寝。真上の3F食堂でカラオケが始まる。知らない曲、北京語でわからない歌詞
でも調子は外れていない。気持ちよさそうに歌ってる。眠りにおちたのか3曲目
を聞いた記憶はない。

[黄山賓館]
 ツイン300元以上、20元刻みで5階まで部屋の料金に格差がある。ちなみに泊
まった300元の部屋は、2F。トイレ、シャワー、TV、AC付き。温泉地の為か、
お湯の色が黄色で、錆かと思ってしばらく待っていた。部屋には、白い茶と緑の茶
がある。情報にある温泉プールや温泉浴地は、別料金って話で、Fuckin Terrible Hot 
Springsかまたはその隣の可能性が大。調べる気が起きなかった。湯口から車で5
分、中央のロープウェイ下から徒歩10分の位置にある。Tel.562202、562324。

[本日(9/12)の主な出費]
朝食(西海飯店の食堂)   50元
昼食(山中)        12元
下り中央ロープウェイ   60元
夕飯           30元
ワゴン(湯口往復)     10元
宿代(黄山賓館)     150元
バスチケット       66元
湯口までの足代+朝食   30元(結局捨て金?)
絵はがき2set       18元


    ―――  上海周辺9日間旅日記 第4日 へ    つ・づ・く ―――


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