ベトナム縦断*旅日記 第6日

{photo:ベジタリアンレストランの夕食}

  
  −−−−−− ベトナム縦断9日間旅日記 ― 第6日 −−−−−−

{6日目;9/24(木曜日)}

[フエ空港まで]
  フエの空港へは、ホテルでUS$4で手配してもらった白タクに乗って行った。
(客が多ければ、おそらくワゴン車なんだろう。)途中、料金所を2つ通過した。
一つ目は車に対して(多分)2万ドン。運転手が何も言わずに支払っていたので、
そう思った。2つ目は乗客1人に対して、5千ドン(50円)。事前に知らされてい
なかったが、だまされている様子ではなく、決まりごとの様に感じたので素直に
支払った。

  空港使用税もハノイの半額だが1万ドン(100円)取られた。抵抗がある額では
ないがチビチビ取れるところから取ろうという姿勢がうっとーしい。


[機窓:フエ-->ホーチミン(旧サイゴン)]
  水量が豊富な様子が見て取れる。粘土色に濁った水が、一見氾濫している様に
見えるが、単に陸よりも水の部分が多い水郷地帯といった感じだ。
  小島になった三角州にまで田畑を作っている様子に生き抜く逞しさの様なのも
のを感じた。


[ホーチミン空港]
  土地の広さはあるものの、他の国際空港に比べたら貧相な空港に降り立った。
それでも、ハノイ、フエに比べれば、数段マシだ。アメリカと付き合った時間が
長かった名残だろうか、、、。客引きのタクシーも、ギラギラした押し付けがまし
さがあまり感じられなかった。
  市内までバイタク(バイクタクシーの略)でUS$3、タクシーだとUS$6。た
またま、AK君とフライトが一緒だったし、目指す宿のエリアもシンカフェ/キ
ムカフェ(ベトナムで有名な旅行会社名)周辺だったので、タクシーをシェアす
ることにした。


[タクシー]
  タクシーの運ちゃんは、英語をしゃべれた。(ホーチミン市の中心部では9割
方の人が英語を話せる)。
・ 空港から市内までの距離は10km。
・ シンカフェのエリアは、治安が悪い。
・ 後ろから付けてくるバイタクや人に注意して、特にスリ(pick pockets)  
       に気をつけな。
と、ここまで親切に情報提供。そして、
運転手「3street離れたエリアに閑静なホテルがある。」
そらきた。
TAKT「いいんだ。まず、ツアーを決めたいし、便利な方が良いから。絶対、ま
ず、キムカフェ前で降ろして。」
運転手「本当に良い所なんだよ。…」
TAKT「キムカフェ前から歩き始めたいんだ。」
運転手「わかった。でも、治安が悪いから、くれぐれも気をつけて。」
まあ、1回ごねただけでアッサリ引き下がってくれたので、ほっとした。


[宿]
  ドミトリー(相部屋)でもいいから安さにこだわるAK君と
  風邪の為、タイマー付きクーラーが今回の旅行では最低必須条件になってしま
った軟弱なTAKTは、
アッサリと別れて、宿探しを始めた。
友人お勧めの「LELE1」という名のホテルが第一志望だったが、キムカフェの
目前に同系列の「LELE2」があったので、手始めに入ってみた。

  2階にフロア全体を使った変な部屋に通された。タイマーエアコン有り、シャ
ワーのお湯、出る。マットレス2つ。昔、ステージだったのか、装飾の入った
柱の上部が目線にあり、部屋の中央には、高さ70cmくらいの段が扇型なってい
た。設備的には申し分ない。奇妙な部屋の作りも気に入った。ツボにはまったこ
とを悟られない様にポーカーフェース、、、ができたかどうかはしらないけれど、
値段交渉にはいった。
  
  値段は、US$16/1夜。3連泊と言うことと、ここに来た理由を聞かれ「日本
の友人の紹介知った」事を伝えると、マネージャーに電話して、仰々しく、
フロント嬢「他の人に言っちゃだめよ。」
と言われ、US$13になった。自分の中でのボーダーがUS$15だったので。一応、
考えたフリをしてから、「O.K.」。多分皆に同じことを言っているのだろうと
思いつつも、まぁ、悪い気はしない。


[今後の予定]
  今日、半日。+あと丸2日。明日、明後日に有名な
  メコンデルタ(ミトー)とクチトンネルの各1日ツアーを入れるとすればフリ
ータイムは今日の半日だけ。そう考えると、何か漠然と不満があった。とにかく
動こう。
シャワーを浴び、Tシャツを着替え、出かけた。


[ツアー]
  ツアーはキムカフェ、シンカフェ共に米ドルだと同料金。だがドンで支払うと
キムカフェの方が若干安かった。

                           シンカフェ           キムカフェ
メコンデルタ(ミトー)     7(970)         7(910)
クチトンネル               4(560)            4(520)
      単位は、   USドル(百ドン)


時間はキムカフェの方が0.5〜1.5時間少ない。直前にツアーに行って来た友人
から、聞いていた通り、内容も大差なさそうだ。それにしても、露骨に競ってい
るのがわかった。判断がつかなかったので、もう一つ、友人お勧めのT&Tトラ
ベルというところを尋ねた。それは8,9ブロック離れたドンコイ通りにあった。
地図で見る限り2,3kmかな?まぁいい。歩けるだろう。


[ホー]
  振り返ってみると、ベトナムに来て6日にもなるのに、有名なホー(ベトナム
の日常的な麺類)をまだ食べていない。今なら、朝飯と機内食を食って小腹が空
いている状態にちょうどいい。そうだ、歩きながら、ホーを探そう。

 屋台はあったものの黒焦げの魚だったりして、見つからない。ココナッツにス
トローさしたやつが2000ドン。プラプラ飲み歩く。冷えていなかったので少し
まずかった。

 きままな歩きを楽しんでいると、後ろからバイタクに声を掛けられた。少し、
旅行者街のフォングーラオ通りから離れていた為、他のカモがいないのか、なか
なか離れようとしない。半ば無視して歩いていると、ホーの屋台に出くわした。
「PHO」と書いてホーかぁ。ほーー。(なんて納得)

  席につくと、バイタクのおっさんは一緒に食べるわけでもなく筋向かいの席に
座る。これ(3.4種類の味噌、チリ、ナンプラー等の薬味)をかけるんだとか、
余計な世話を焼きに同席してくる。おもむろに、日本人のサインや紹介文がびっ
しりの手帳を出し、見ろという。ゆっくり食いながら、一応、目を通す。

  名前はグエン。3年前はシクロ(椅子付き自転車)に乗っていたようだ。金を
貯めたのか、最近2年間はバイタク。連日だと、2日目に車を借りて1日$15ふ
んだくっている。

  賞賛から絶賛が、98%。に対して価格に対する猜疑が2%。韓国人1人以外全
員日本人。胡散臭い。でも、相場自体しっかり1時間US$1〜2。で悪くはない。
とりたてて市内観光の目玉はなかったが、旅行会社と銀行と郵便局だけは行きた
かった。日差しも暑さも強い。
TAKT「2〜5時の3時間で4万ドンならいいよ。」
要は書かれている最低賃金であるUS$1(14000ドン)/1時間の下ならOKのつ
もりだった。
最初渋っていたが、少し考えて
グエン「今日のノルマは5万ドンなんだ。2〜6時の4時間で5万ドンでどう?」
TAKT「う〜〜ん、O.K.」
 この判断が、最後にベトナムらしいアクシデントを引き起こすとは、この時は
思いもよらなかった。


[T&Tトラベル]
  友人から少し高いけど、質がいいと聞いてやってきた。でも、ドンコイ通りは
高級街。そこに店をかまえていたこの旅行会社は、1人頭US$25〜100のツアー
しかなく。人数割で安くなるシステムだった。一人で、それほど、ベトナムの観
光地自体に期待を持てなくなっていた自分にとってここは場違いの場所だった。
パンフ一枚だけもらってそそくさと立ち去った。喩えるなら、日本でJTBを5
倍くらい高級感を持ったお高く止まった感じだった。

  この時点で、メコンデルタだけは、オーソドックスに歴史の古いシンカフェに
しようと決めた。


[戦争博物館]
  銀行で両替。郵便局で切手や布のレターセットを買った。その前の絵葉書売り
は最初US$1、一声で8000ドン/10枚。でも市価6000ドンと知っている為、5000
ドンで交渉し始めるとすぐ逃げていった。

 郵便局前の教会は閉まっていて、5時〜ミサがあるという話だった。それまで
2時間、王宮・チャイナタウン・戦争博物館の中で少し迷ってから、戦争博物館
に行く事にした。

 兵器、武器、写真は充実していた。中でも
奇形児のホルマリン浸けと
鎖骨から下のない戦友を放心状態で片手に持っているアメリカ人の写真は、
圧巻だった。

たっぷり1.5時間かけ、出口から出た時、雲行きが怪しくなり、バイタクのグ
エンおじさんは消えていた。キョロキョロして1分もたたない内に他のバイタ
ク&シクロのおっさん達4人に囲まれる。もう雇っているんだけど、いないから
困る。タイマンだといいけど、4人が口々に早く少し訛った英語で売り込みを掛
けてくるので、うっとーしくなって&多少身の危険を感じてまた、博物館の敷地
内に待避する。歩いて帰るか、、、と思った時、やはり大粒の雨が降ってきた。1
分でザザ降り。スコールかぁ。時間は16:30前。  一応、待ったが、運ちゃんの
グエンは現れなかった。少しムカついたが、運賃をまだ払ってないので、自分で
自分を納得させた。探しはするが、日本人の自分にとって、ベトナム人の顔の違
いは分かり辛い、皆似たような顔に見えてきて、自分の中にあったグエンの顔の
イメージもわからなくなってしまった。

 金は、後払いだったのが救い。しょうがないね。と、あきらめ、地図で現在位
置を確認して、売店で方角を確認し、隣に位置する王宮に向かって歩き出した。


[王宮]
敷地がでかい。塀がえんえん続く。やっと裏口らしきものに人がいたので、
聞いてみると、16:30になったので今からの入館は無理だと言われた。
あきらめるしかなかった。まぁ、元々あんまし期待してないから、落胆はし
なかった。


[プラプラ、チャプチャプ]
大粒の激しい雨の中、傘を差して歩く。周りはみんなポンチョを着ていて、
傘を差しているのは一人だ。まるっきり浮いている。ポンチョ買いたいなぁ。と
思いつつ、プラプラ歩く。こんな雨の中を歩くのは久しぶりだ。ビーサンだから
ぬれてもかまわないし、暑かったから、濡れるのもちょうど良い。
ドロの中に足首まで突っ込むことは、小学生以来なかったかもしれない。な
ぜか、一人陽気になって道の端に川の様に流れ出した泥水の中央にわざわざ入っ
て宿の方向に向かって歩いた。
スポーツ店が3,4軒並んでいるところでは、テント生地を屋根伝いに集め
られた雨水が、滝の様に落ちてきていた。足をそこに差し出して、ドロを流す。

黴を纏ったヒトデが多数展示してあるアンティーク屋や一枚23000ドンのCD
屋をからかったりしながら、プラプラしているうちに雨は小止みになり、マーケ
ットらしい賑やかな場所に出た。


[マーケット]
ランプータンが山積みになっていたが、表通りだった為、吹っかけられた。
いくらなんでもマレーシアより高いってことはない。もちろん買わなかった。マ
ーケット内に入っていく。野菜、、、珍しいのもある。でも、買う必要がない。っ
と、オバちゃんが、鳥を捌いている。黒い羽した鶏っぽいやつの首を左手で捕ま
え、篭から取り出す、右手に持った黒く錆びたナイフで頚動脈を切る。赤黒い血
で小皿が満たされる頃、裸足の右足の下でもがいていた鳥の動きが止まる。じー
ーっと見ていると長く感じられるが大体10秒と持たない。10羽くらい動かなく
なった鳥が貯まると沸騰したお湯に浸け、即、羽根を毟る。実際やってみてない
ので感触はわからないが、すごく簡単に羽根は取れていく。鮮やかな作業にしば
し見入っていた。果物を物色し、思い直してカメラを片手に元の場所に戻ると子
供が、その解体場所で、水シャワーを浴びていた。衝撃はない。ただ、自然な感
じがして、眩しかった。
{photo:左下のトリの血と子供のシャワー}
マーケット内の果物屋は少なかった。無難にドラゴンフルーツ1個を食べよ
うと、おばちゃんに声をかける。英語が通じない。少し戸惑ったが、ここは、市
場、山積みしているものは売り物。そしてその物は食べ物である。向こうは売る
為、こっちは買う為にここにいる。身振りで1っ個ゲット。5000ドン。ハノイ
より安い。英語が通じないだけのことはある。とりあえず、身振りで半分に切っ
てもらった。嬉しそうにスプーンをカバンのポケットから取り出し、さあ、食べ
ようと思ったら、おばさんが軽いしかめっ面で止める。(え“、マーケット内で
食べたらあかんの?まさか)と思っていると、おばさんはそれぞれをもう半分の
1/4にカットしてしまった。一瞬、(なんで余計な事を)と思ったが、1/4
にすると皮が簡単に捲れて、そのままかじれるのだ。とわかった。
「兄ちゃん、それは邪道やわ!見てみ、こうやって食べんのや。」
と身振りで言い、日に焼けた顔でニカっと笑った。なるほど、
TAKT「シン、カムオン!」
と唯一考えずに出てくるようになった「感謝」のベトナム語をいうと、差し出さ
れた椅子に座り食べ始めた。すると、もの珍しいのか、1個食べ終わる前に30
人近い市場の人達がわらわらと集まって色々しゃべりかけてくれた。その中で片
言の英語がしゃべれる人は得意になって通訳を始めた。収まりが付かなくなりそ
うだったので写真を撮ってあげて、別れを告げた。やっぱり、ベトナム人であっ
ても素の人は良い人なんだ。運転手に置き去りにされた心の傷が大分癒された。
他に、キッチュなプラスチックの置物、かわいいガラス細工、縫製のあまり
良くない衣服、胸パッド、皮製品、などを物色し、タバコのパッケージで作った
紙細工を写真に収め、マレーシアで買った時計のベルトを100円で修繕し、変
わった菓子類を物色し、、、そんなこんなで、
あっという間に2時間以上の時間が過ぎ去った。
どうしても手がでない
イモムシ
肩と胸パットのかたまり
-->アオザイの女性がスタイル良いのは多分、、、

[目的達成1:バイクの洪水を横切る]
宿への帰る途中、レロイ通りを横切ったのだが、この通りの交通は昼間の流
れと全然、様子が違っていた。噂には聞いていたが、2ケツのホンダのスーパー
カブが、バイクレースの10倍以上の密度で流れてくる。信号で塞き止められ、
また、流れる。ベトナム関係の本で読んだが、このカブの集団は、他の2つの通
りと共に3角形に周回しているのだそうだ。その情報通り彼らは、ただ個々に
乗って走っているだけの様に見えた。

信号では、横断歩道もあるのだが、3差路っぽくなっているところでは、間
断なくカブが、流れてくる。仕方ないのでジモティを見習って、横断し始めた。
突っ込んできたらいつでも前後にすばやく飛べる様な心構えで、ゆっくりと歩く。
やってみると案外簡単。少しのスリルと渡りきった時の達成感がある。自分でも
笑ってしまうけど、今回のベトナム旅行の第一位の目的である「バイクの洪水を
横切る」ミッションが終了した。密かな充実感に、少し御満悦になって、宿への
帰路についた。

  目指す通りを2回間違えたが、何回か人に聞いて軌道修正し、返ってくるこ
とができた。


[ベジタリアン・レストラン]
見覚えのある風景に出会い。宿まで500mくらいになったとき、レストランの
猛烈な客引きにあっているAK君とバッタリでくわした。一緒に夕飯しようとい
うことになり、手ごろな食堂を探す。フエの安い物価が、頭の中にあった僕たち
は、メニューの価格にシビアだった。
「Flyed Riceが15000ドンもする。ここは高い」
なんて言いつつ、フォングーラオ通りの東に一本は入った路地に、Flyed Rice
が8000ドンのメニューを見つけた。たれ目の為、いつもコロコロと笑っている
様に見える女の子に案内されて、注文を始めた。二人とも、野菜に飢えていた。
欲しいものも似ていた。ふと気がつくと、ここはベジタリアンレストランだった。
AK君は、英会話を勉強中。丁寧な英文で、考えながらながらも、思いのほ
かスマートにデートの約束を取り付けてしまった。その会話の中でわかったのは、
ベトナム人は本当に休みを取らないということだ。週休2日なんてベトナムじ
ゃ考えられないらしい。1週間に7日店で働き、明後日は特別に8〜13時、16
〜22時の出勤だから、その間の3時間しか空いていない。3回くらい渋ったが、
「その間に私の家に訪ねてくれたら、つきあってあげるわ。」
AK君の押しに負けたって感じでOKした言葉がそれだった。

[最後の全1日の使い方]
  いつも明るく元気に見えるAK君が、レストランの中で
「リラックスしてない。」「疲れている。」「野菜をしっかり食って元気にならなき
ゃ。」
なんて言っていた。そう、そうなんだ。自分も考えてみると、だまされまいとす
る気構えの為、自分自身が開放できていない。この漠然とした疲れは、そんな精
神的なものも大きいのだろう。

さらに、今回の旅は、現地ツアーに参加することがメインで、自分で何か見
つける時間が少なかった。何か煮え切らないものを抱えている感じがするのは、
このせいかもしれない。漠然とした今回の旅行と旅行中の自分自身に対する欲求
不満は、多分、ここらへんにあるのだ。

このあたりから、最後の全1日の使い方を考え始めた。考えはまとまらなかった
が、明日の夜まで時間がある。だから、とりあえず寝た。
真下の通りの喧騒と自分の中の葛藤にしばらく寝付けなかったが、いつのま
にか、眠っていた。

  明日は、シンカフェのメコンデルタ(ミトー)ツアーだ。

続く−−−−−− ベトナム縦断9日間旅日記 ― 第7日へ −−−−−−


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