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◆★○ 別冊 コラム 第四弾 ○☆◆
◆ ◆ ◆  【コラム】 バリ島の爆弾事件について  ◆ ◆ ◆


 普段の日記風の軽いノリを捨て、今回だけはシリアスにいきます。
 写真は、ワンクリックで行ける様に文中にURL(HPアドレス)を記載しました。


◆<概要>
 2002年10月12日(土)夜11時、インドネシア・バリ島のクタにあるクラブ(昔;
ディスコ)「Sari Club」と「Pady's Club」にて、爆破事件が起きた。
  t12_4bom.htm

◇◆<爆破跡の写真(4枚+31枚)>
 その他、デンパサールのアメリカの外交施設近くでも、、、1発
  /t12_4bom/balibm01.htm

「Pady's Club」:爆弾を積んだ自動車を前にセット
「Sari Club」 :建物内にセット。
  /t12_4bom/balibm05.htm

 爆発は、時限式で、ほぼ数秒違いで起こったらしい。その結果、多数の死傷者が
でた。


◆<時系列でまとめると、、、>
 10月12日:バリ島のクタのクラブにて爆発(2発)
 10月13日: 死者 181人、負傷者 140人以上    by インドネシアのNews
      (西パプアでTVを見て、通訳から聞き、知る)
 10月14日:「アルカイダの犯行と確信」       by 米ブッシュJr.大統領
 10月14日:「バリ爆破テロで軍用爆薬を使用も」   by インドネシア警察
 10月15日:日本人負傷者 10人に
 10月15日:日本の旅行各社に痛手、ツアー中止相次ぐ
 10月16日:9月のテロ未遂と手口酷似
 10月16日:「バリ島テロ可能性を米政府が前日に警告」by 米紙報道
 10月18日:マニラ首都圏でバスに爆弾-->3人死亡
 10月19日:インドネシア警察、バシル師(※)の身柄を拘束
 10月19日:フィリピンでバス爆破事件
 10月23日:米国、イスラム地下組織を国際テロ組織に指定
 10月24日:ジャカルタのショッピングセンターでも爆破、2人負傷
 10月28日:インドネシア警察、バシル師をジャカルタへ強制移送
 10月30日:インドネシア警察、犯行グループは 7〜10人で構成と推測。
       その内、容疑者3名のモンタージュ写真を公開。20歳(警官)、27
      歳、30歳で、内1人が東ジャワ出身者、もう1人がジャワ島出身者。
       何名か拘束している容疑者の1人は、ロンボク島出身の40歳前後の
      男。名前は、ロジャリ。アルカイダの東南アジア地区幹部らしい。
 11月03日:パプア島からTimika経由でバリ島に飛ぶ。
       (デンパサールのアメリカの外交施設近くの1発の存在を知る)
 11月06日:容疑者1人を逮捕、現地の民間放送局が報道
 11月07日:バリ島テロ関連で初の逮捕者
 11月09日:バリ島爆破テロ、容疑者に外国人含まれず
      ウブドにて、2日連続で慰霊祭

 ◇◆<ウブドの慰霊祭・写真(15枚)>
   /t12_4bom/balibm36.htm
    一見きらびやかに見えるが、、、、
   /t12_4bom/balibm41.htm
    これがバリ流、葬式の正装だ。

 11月11日:テロから1カ月、観光業回復遠く (感覚的に10%以下)
 11月13日:187名が死亡(61名が国籍も不明)。324名が重軽傷。
      国籍と死亡(deceased)者数は以下の通りである。
       Australia : 59 名
       England : 18 名
       Indonesia : 11 名
       Germany : 6 名
       Sweden : 5 名
       USA : 6 名
       Switzerland : 4 名
       Denmark : 3 名
       Japan : 2 名
       France : 2 名
       Korea : 2 名
       New Zealand : 2 名
       Canada : 1 名
       Equador : 1 名
       Holland : 1 名
       Singapore : 1 名
       South Africa : 1 名
       Taiwan : 1 名
      ホームページ(WebSite)の中には、死亡者名(42名/126名)
      まで公表しているところもある。
      負傷者のうち7人は日本人女性で、このうち2人が重傷。

 11月15日:クタの爆破跡にて、慰霊祭
 11月17日:バリ島の爆弾テロ、主犯格ら6人の似顔絵公開
 11月18日:インドネシア警察は、サムドラ容疑者を主犯と断定した


◆<爆破場所について>
 両クラブはクタの中でも有名である。毎晩朝まで、欧米系旅行者達で混雑し、盛
り上がるクラブだ。爆破のあった夜11時というのは、ちょうど、客が夕食を終えて
集まってくる時間帯であった。地元の人は、
「もしもう1時間、爆発時間が遅れていたら、被害者数はもっと多かっただろう」
と言っていた。

 かくいう僕も、2001年1月、両クラブを訪れている。
 ナゼか道ズレになったオーストラリア1、NZ2、英国1、ドイツ1名の女性達(う
〜ん、ハーレム状態!! (#^.^#))で、夕食を食べた。夜10時過ぎ、「Sari Club」は
超満員。で、「Pady's Club」へ流れた。
 どちらのスタッフも、表面上、陽気でフレンドリィだった。大音量の音楽の為、
怒鳴り合わないと会話ができなかった。2時間後、ドイツ人、オーストラリア人と
共に僕は、クラブを立ち去った。しかし、NZ人姉妹と英国人は、すごく気に入った
(そこで知り合った西欧人男性の方かも?)様で、朝まで踊り明かしたそうだ。僕
等3人は、ホテルで朝まで飲み、語り合った。どちらに流れてもその夜は徹夜コー
スだった。


◆<様々な可能性>
 この事件の背景としては、色々な可能性が考えられる。

・(A)貧富の差を妬んだ貧困層の犯行説
   多数の観光客と裕福なバリ人を無差別に殺傷したこと、からの想像。

   1999年2月、ロンボク島にて、イスラム貧困層が裕福なフランス人や中国
   人を襲撃する事件が起こった。僕は、この事件の巻き添えを恐れ、漁船で4
   時間かけて、バリ島に脱出したという体験がある。

    爆弾をセットした人が、隣の島から船で渡って来たロンボク住民だった。
   としても僕は、全然、驚かない。
    ただ、組織力を考えるとこの仮説には矛盾が生じる。


・(B)イスラム過激派組織「ジェマー・イスラミア」犯行説
    英・米・豪の3ヶ国政府は、インドネシアのイスラム過激派組織「ジェマ
   ー・イスラミア」(以下、JIと略す)と「(オサマ・ビンラディンを含む)
   アルカイダ」が共謀して起こしたテロだと発表している。

    JIは、Ngrukiネットワークの1グループである。そして、Ngrukiネットワ
   ークは、Abu Bakar Ba'asyir師(※アブバカル・バシル)によって1970年代
   に設立されたイスラム教団体である。
    同グループの目的は、
   「インドネシア、フィリピン、シンガポール、マレーシアetc.の
    東南アジアを厳格なイスラム教国に変え、
    新しくイスラム大国を作ること」
   らしい。
    中でも、JIは過激との噂で、
   「欧米の毒に侵されている(イスラム教の価値観からみて堕落している)」
   という理由で、ジャカルタなどのアルコール類を出す店(ナイトクラブ・バ
   ー・クラブなど)を襲撃してきた。

    だから、「JIが、バリ島で爆発事件を起こしても不思議ではない」とい
   うのが、英・米・豪国の論理だ。
    11月末時点でインドネシア政府は、この方向で発表が重ねられている。

    しかし、最近の戦争をしたがっている米国の動きを見ていると素直に信用
   はできない。テロらしき事件が起こると全てイスラム原理主義関連の団体の
   仕業と見なす先入観や誤解が、アメリカの報道(それを盲目的に流す日本や
   英国の報道も含め)を中心として、広がっている気がしてならない。

    ネット上には、反論も転がっている。「911事件」当時、日本の某TVのヤ
   ラセ報道等、その国を見ていれば、ジャーナリストでないただの旅人でさえ
   「嘘」とわかる表の報道もあった。現状は、報道に温度差があるが、
   「同日や同時期にフランス(11発)やフィリピンで起こった爆破事件」
   も合わせ、状況証拠だけで進んでいる印象が否めない。


・(C)インドネシア政府・軍(一部)の自作自演説
    同爆発事件で使われた爆弾は、C4型と判明。民間人が持つことは難しい
   が、インドネシア軍が同爆弾を保有していることから、、、。

    インドネシア政府は、テロ取り締まりを叫ぶ米国(CIA)などから、
   「Ba'asyir師を逮捕しろ!」と圧力をかけられてきた。豪国からも東ティモ
   ールの独立、アチェの独立運動(豪州女性2人が、デモでプラカードを掲げ
   た。その後、国外退去になっている)などで、内政干渉を受けてきた。その
   鬱憤晴らし?

    しかし、インドネシアの中で観光産業は、国内で有力な産業の一つである
   ことから、自分で自分の首を絞める様なこの事件を政府は望まないと思う。
    それに、有名な観光地で、テロが起これば、さらに、米・豪両国他の圧力
   や介入を招く。その結果、自国国教で、人口比率も多いイスラム教信者との
   板ばさみになり、今以上に政治が難しくなる。

    けれども僕は、旅を通じて、インドネシアが多民族国家であることを知っ
   た。各地へ入植したジャワ人が、現地先住民を虐げている現実も見た。教育
   不足・対話不足、それに無関心に端を発する難しい問題が、民族や文化の数
   だけ、いや、それ以上、横たわっていることを感じた。
    東ティモールやアチェで豪国人が独立運動に参加している現状を「内政
   干渉」と一方的に見なす偏った考えのインドネシア人がいることも確かだ
   。「Australia死亡者 : 59 名」という人種の偏りは、バリ島を訪れる
   旅行者の比率とは似ているが、多すぎる。
   だから、『軍の過激な一部の人間が、故意に豪国人を狙った』
   という可能性も捨てきれない。

    インドネシア国内で出会った豪国人達の中で、この仮説に真っ向から反論
   する人はいなかった。


・(D)CIA陰謀説
    同爆発事件で使われた爆弾は、アメリカ製のC4型と判明。
    米国人の死者数が極端に少ないこと。

    上記を根拠に米国犯人説を唱える人は、インドネシア人の若者に多い。だ
   が、もっと以前から、米国人旅行者が、インドネシア国内から脱出せざるを
   えなかった理由がいくつかある。2002/9/4にTimika(ティミカ:西パプア南
   部の金鉱都市)で教師3名(内、米国人2名)が、殺された。
    インドネシア政府は、最初、パプア人の犯行と発表したが、後日、FBIが血
   痕からDNA判定をすると犯人はマナド人と判明。

    また、インドネシア国内の米国施設に襲撃や爆弾などの事件が起こったこ
   とを受け、外務職員が全員撤退。米国の保険会社がインドネシアを適用外を
   したことから、普通の米国人旅行者は、インドネシア国内にそれほど残って
   いなかったという事情がある。

    但し、テロ撲滅を大義名分に、本音は兵器の消費とテストとその後の経済
   浮揚を狙って、「世界中で戦争する場所を常に探し回っている今のアメリカ」
   を見ていると、僕は、この説の可能性を捨てきれない。
    米国(軍)は、常に相手を挑発して手を出させてから戦争を始める傾向が
   ある。第2次世界大戦(WW?)のパールハーバー〜〜〜イラクのクェート進
   行etc.
    ブッシュ米大統領が2002年1月29日の演説で、テロ支援国家(北朝鮮、
   イラン、イラクの3ヶ国)を非難して、使った表現
   「axis of evil(悪の枢軸)」
   を思い起こすとゾッとする。あえて、WW?の枢軸国(日独伊3ヶ国)を示す
   「axis」という言葉を使う必要性があったのだろうか、、、。僕は、
   ブッシュJr.大統領が戦争の種を撒き散らしている面もある。と思う。

    現場やインドネシアのTV-Newsの陰惨さ
     /t12_4bom/balibm05.htm
     (TV-Newsでは、死体袋や血だらけの西欧人がモロに映っていた)
   を見たバリ人の多くや旅人でさえ、この仮説を一番支持したい気分になる。
   のは、どうしようもないことだと思う。

    隣室のベルギー人旅行者も「一番クサイ」と言っていた。でも、
   「あらゆる可能性があり、今は、解明されていない。」
    という(決め付けはいけない)ことも確認し合った。


    確かな証拠を待ちたい。


◆<再考察>
 これまでインドネシア国内で起きた爆発事件は、役所や軍施設など、象徴的
な場所で小さなの爆発を起こしてきた。脅しや示威行為としての意味合いが、強か
った。現実に死者数は、ほとんど出ていない。

 それと比較して、今回の爆破事件は、「死者が外国人メイン、数3桁以上」と手口
と目的が全然違う様に思う。だから、各国政府の圧力や先入観に踊らされていない
多くのジャーナリストがネット上などで語っている通り、この事件を考察する時、
「アルカイダ」「インドネシア軍」「アメリカ(CIA)」のいずれの関与とみるか、、
未だに判断は難しい。

 いずれにしても、インドネシア政府は、Timikaの教師殺害事件で、「嘘」をついた前科がある。
「11月18日:インドネシア警察の主犯断定とJIの関与」
までの正式発表は、海外からの圧力を考え、インドネシア政府や警察が事実を強引に
ネジ曲げたシナリオなのかもしれない。

   ・バリ爆破事件
   ・911
   ・アメリカ軍の動き(アフガン報復、イラクなどへの遠征攻撃)
   ・ナチ-->イスラエル(ユダヤ)-->パレスチナのイジメと憎しみの連鎖
    、、、等
 僕は、濁りなき眼で見続けていきたい。

 そして時々、
『「言いたい事を言えない?」か「歪めて伝えてしまう」マスコミ』
の先入観や嘘の危うさを感じた時、僕は、その危険性をできる限り多くの人に伝え
ていきたいと思う。


◆◆<参考資料>
(English)
 雑誌:TEMPO (定価:Rp.19,800 (280円))
    (本事件では、TimesやNewsweekよりも読みごたえがあった)
 http://www.guardian.co.uk/international/story/0,3604,811289,00.html
 http://www.indo.com/bali121002/
 http://news.bbc.co.uk/2/hi/asia-pacific/2339693.stm(※バシル師の写真)
 http://news.bbc.co.uk/1/hi/world/asia-pacific/2325925.stm
 http://asia.cnn.com/2002/WORLD/asiapcf/southeast/10/21/indonesia.probe/
(日本語)
 書籍:「パレスチナ」 広河隆一 著
 http://www.sankei.co.jp/news/021107/1107kok001.htm
 http://www.worldtimes.co.jp/special2/bali/main.html
 http://ga-zelle.co.jp/sango/contents/bali_1012_1.html
 http://www.nikkei.co.jp/sp2/nt26/20021013de2iec0313.html
 http://www.nichigo.com.au/headline/News/hnmain.htm

>>>>>>>>>>>>>>>>>>>>>>>>>>>>>>>> つづく



ここまで、がんばってツライ記事を読んで頂いた方への感謝と口(瞳)直しの意味を含め、「日本の彩確認」へ


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